
こんにちは
アルベイズ梶原です。
今回は誰もが名前を聞いた事があると思いますが、その役割を知っている方は少ないのではないでしょうか?
ビタミンCの美容における役割と効果、問題点を科学的な観点から検証しました。
ビタミンCとは?
ビタミンCは化学的にはアスコルビン酸のことです。
有機化合物が出てきたので、例によって構造式を載せておきます。
ウィキペディアより
ヒトは体内でアスコルビン酸を合成できないので、摂取しないと生きていけない化合物という意味で生物学的にはビタミンCと呼ばれています。
(ちなみに、イヌやネコは体内で合成できるので、彼らにとってはビタミンではありません。)
ビタミンの中でもCは水に溶けやすいので、水溶性ビタミンに分類されています。
ビタミンCの生物学的役割
ビタミンCは体内でコラーゲン合成に必須なので、不足するとコラーゲンが十分に合成できなくなり、様々な問題が起こります。
コラーゲンと言うと肌のイメージが強いかもしれませんが、実は体内のいろんなところで重要な働きをしています。
ヒトなどの哺乳類だと、
- 皮膚(真皮)
- 骨
- 軟骨
- 血管
にたくさん存在し、弾性を保ち構造を支える役割があります。
肌のコラーゲンが減るとハリが無くなって、シワが増えますが、これは表皮を下から支えているのがコラーゲンだからです。
同様にコラーゲンが減少すると骨、軟骨、血管も脆くなります。
ちなみにコラーゲンをたくさん合成している上のような組織はビタミンC濃度が高いと考えられています。
船乗りを恐れさせた壊血病
コラーゲンは血管の構造を支える生体分子でもあるので、ビタミンCが不足してコラーゲンが合成できなくなると、皮膚も血管も脆くなり、全身のいたるところで皮膚も血管も切れて、出血します。
結果、全身から血が吹き出して死亡します。
これが大航海時代に猛威をふるった壊血病です。
ビタミンCは新鮮なフルーツや野菜に含まれます。
そのため、新鮮な野菜を保存しておけない時代の長い航海では不足してしまい、船乗りの間で壊血病が大流行しました。
しかし、原因がビタミンC不足だと分かってからは船には大量の柑橘類が積まれるようになり、多くの船乗りの命が救われました。
知識によって多くの人名が救われたということなので、
”知は力”ということがよく分かるエピソードです。
美容は直接命に関わるわけではありませんが、過去に悩んでいた自分としては外見はかなりQOLに影響を与えることを経験してきました。
外見は良いに越した事はありません。
知識があるだけでも、間違った美容法に騙されたりすることがなくなるので、知っておくことは大事です。
余談1:アスコルビン酸の由来
壊血病はビタミンCの欠乏症ですが、ラテン語で壊血病は”Scorbutus”で
これに否定の接頭辞”a”がついて
”Ascorbic Acid” アスコルビン酸
という名前になったそうです。
なので、 「壊血病知らず」的な意味の名前です。
ビタミンCの美容効果
ビタミンCには様々な美容効果があることが確認されています。
具体的には
- 美白効果:メラニンの生成を抑制し、シミなど色素沈着を防ぐ
- 抗酸化作用:老化の原因となる活性酸素を除去することで、シワやたるみを防ぐ
- コラーゲン合成促進:コラーゲンを増産することで、肌のハリと弾力を高める
- 皮脂分泌抑制:皮脂の分泌を抑えることで、ニキビ・吹き出物を防ぐ
- 毛穴の引き締め:毛穴の開きや黒ずみを改善する
などの効果があります。
Pullar JM, Carr AC, Vissers MCM. The Roles of Vitamin C in Skin Health. Nutrients. 2017 Aug 12;9(8):866. doi: 10.3390/nu9080866. PMID: 28805671; PMCID: PMC5579659.
抗酸化作用は嘘!?
ビタミンCには抗酸化作用があることが巷では有名ですが、これは半分正しく、半分は間違っています。
ビタミンCの抗酸化作用
ビタミンC(アスコルビン酸)分子そのものには抗酸化作用があります。
この抗酸化作用(=活性酸素除去作用)によって様々な美容効果を発揮しています。
シワやシミは
- 紫外線で生体分子(コラーゲンなど)が破壊されると活性酸素が発生
- ⇒連鎖的にハリ分子が破壊され、シワが増える
- &細胞がダメージを受けてメラニンの生産量が増える
というメカニズムで増えるので、紫外線ダメージを増幅する活性酸素を除去することが、連鎖的被害を食い止めるために重要になります。
ここでビタミンCの抗酸化作用が効くわけです。
肌にはビタミンCが高濃度で存在していると考えられていますが、そのビタミンCは主に血流によって運ばれています。
しかし、ビタミンCは水溶性なので、口から摂取しても体内に保持することはできず、余剰分はすぐに尿中へ排出されてしまいます。
なので、実際にビタミンCを積極的に摂っても抗酸化作用を発揮してくれることはまずありません。
サプリよりもレモンの方が良い?
体内にビタミンCを長く留まらせるにはサプリのように精製されたビタミンCよりも、食品から摂取する方が体内に留まりやすくなります。
これは、食品にはビタミンC以外にも複数の栄養素や食物繊維が含まれるため、ビタミンCの吸収が遅くなるからです。
サプリを選ぶ際も、ローズヒップなどが配合されているものなどの方が体内での滞在時間が長くなるので、抗酸化作用についても期待できます。
ビタミンCは不安定で分子が壊れやすい
抗酸化作用や紫外線吸収作用のある化合物は不安定であることが多いです。
ビタミンCも例外ではなく、酸素や熱、光に弱いです。
こちらは先日作ったアボカドディップの写真ですが、我ながらアボカドの緑がキレイですね~
しかし、僕の料理の腕によるものではなく、レモン果汁に含まれるビタミンCの抗酸化パワーのおかげです。
以前、レシピに書いてあるレモン果汁の意味をよく考えずにレモン果汁ナシで作ったときは真っ黒になりました。
これは色素が酸化されて変色するためです。
レモン果汁を加えると色素よりもビタミンCの方が先に酸素と反応して、身代わりに酸化されてくれるので色が変わりません。
ビタミンCは身を挺して酸化を防ぐ(抗酸化作用を発揮する)ので、一度反応した分子は抗酸化剤としては機能しません。
基本的に肌からは吸収されない
ちなみにビタミンCは水溶性で油とは馴染まないなので、皮膚バリア(皮脂膜)を通過しません。
そのため、肌から浸透して、肌で抗酸化作用を発揮することはありません。
なので、基本的には口から摂取する必要があります。
ですが、上にも書いた通り、口から入れても肌のビタミンC量はほとんど増えません。
そこで出てきたのが、浸透力を高めたり、安定性を高めたりしたビタミンC誘導体です。
ビタミンC誘導体
ただ、最近はビタミンCを化学的に加工して浸透しやすくした成分もあります。
ビタミンCにパルミチン酸を結合させたり、リポソームカプセルにアスコルビン酸分子を閉じ込めたりする技術が開発されています。
リポ化ビタミンC
最近、よく耳にするようになったのが、リポ化ビタミンCです。
これはアスコルビン酸分子をリポソーム(脂質膜)に閉じ込めて、水溶性のアスコルビン酸を脂溶性にしたものです。
皮脂膜は脂なので、リポ化ビタミンCになると、皮膚バリアを超えて浸透できるようになります。
また、サプリとして摂取しても消化管で壊れにくくなり、吸収率が高まるため、血中濃度をより高く維持しやすいとされています。
高浸透型ビタミンC誘導体(APPS)
”Ascorbyl Palmitate Phosphate Sodium”の略で、日本語だと「アスコルビルパルミテートリン酸Na」になります。
両親媒性ビタミンCとも呼ばれています。
ちなみに、アプレシエが商品名です。
脂と馴染みやすい脂肪酸であるパルミチン酸を化学的にビタミンCに結合させることで皮脂膜を透過しやすくしたビタミンC誘導体です。
ビタミンCは朝使ってはいけない!?
ビタミンCを含む化粧品は朝使ってはいけないという噂がネット上にはありますが、これはただのデマです。
一部の柑橘類にはビタミンC以外にもソラレンという化合物が含まれています。
このソラレンには肌の光感受性を高め、色素沈着を起こりやすくする作用があります。
簡単に言うと紫外線ダメージを増幅するのがソラレンということです。
ビタミンCを含む柑橘類にソラレンが含まれるため、ビタミンCまで紫外線による色素沈着を促進すると勘違いされたものと思われます。
まとめ:ビタミンCは効果的だが、効率よく吸収することが難しい
これまで、ビタミンC(アスコルビン酸)の美容効果について、エビデンスをもとにあれこれ解説して来ました。
まとめると
- ビタミンCはコラーゲン合成に必須(=生存に必須)
- 抗酸化作用があるが、体内にとどめておくことができない
- 肌から浸透できるビタミンC誘導体も出てきている
というところですね。
余談2:ビタミンCは酸っぱくない
ビタミンCそのものの味はどちらかというと苦いです。
ビタミンCのサプリを口に含んで舌の上で転がすとよくわかります。
レモンなど柑橘類が酸っぱいのは主にクエン酸の酸味のせいです。